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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【強さと大らかさに圧倒されて】

2006.1.16 

中村桂子館長
 お寒いですねぇ。今年のお正月は、ちょっと長くお休みをいただいて、家で過しました。と言っても、過してみると特別のことは何もしていないことに気づくのです。おせち料理を作って、年賀状を書いて、庭掃除をして、集めた枯葉を暖炉で燃やしてお芋を焼いて、季刊「生命誌」の原稿に手を入れて、ピアノをちょっと楽しんで、メールを読むついでにコンピューターの中に入っているトランプゲームをして・・・その他諸々なんということのないことをしているうちにお日様が昇り、また沈んでいきました。でもこれが暮らしというものかなあと思います。
 この間、東京はすべて晴れ。ニュースで豪雪が伝えられ、3m以上も積もっている様子が映し出されると、あまりの凄さに驚くばかりです。上に積もる柔らかい雪は雪崩になりやすいとのこと。大きな事故にならないようにと願います。自然の力はすごいと改めて思いますし、どういう所で暮らすかによって考え方が決まってくるのだろうなあと思います。私はほとんど東京で暮らし、その他少しづつ過した土地も、すべて太平洋側なので、冬に3日以上お日様を見ないという体験をしていないと言ってもよく、いつもお日様を意識しています。このお正月も、朝は寒いのですが、10時頃になればガラス越しに入ってくる日の光でポカポカ。夕方は、西の山に沈むお日様が空に刻一刻変わる映像を描き出してくれます。幸い、我が家は丹沢の向こうに富士山が見え、そこに太陽が沈みますので、毎日見事な映像を楽しみました。今年は、昼間は真っ青に澄み、夕方はさまざまな形の雲が、赤に金色に黒にと染まって、とくにきれいだったので、人間の社会もこんな風に澄んだ感じと美しさとの組み合わせで進む年になるといいなあと思ったのです。どうも甘めですね。豪雪の中で孤立した地域の方が、「電気も水道もちゃんと来てるし、食べものもあるし」と元気な声で話をしていらっしゃるのを聞いて、その強さと大らかさに圧倒されました。こういう時“爪のアカでも飲んで”と言うんですよね。
 “自分に対する厳しさ”や仕事への真剣さを持ちながら、その中に“ゆったり”とか“ていねい”という言葉を組み込んでいきたいと思いながら仕事始めです。
 日常皆さまが考えていらっしゃることをご意見を聞かせていただきたいと思っておりますので、まさに“ちょっと一言”で結構です。書き込んで下さい。

 
 
 【中村桂子】


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