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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【日本の未来は明るいぞ】

1999.10.1 

 年に2回ほど高校で話をする機会を持っています。正直に言ってこれは私にとってとても難しい仕事です。まず高校の全校生徒というと少なくとも五百人は越しますし、ほとんどの場合千人以上になります。しかも一年生と三年生というこの時の二年の差は大きい。全員にピッタリと合う話などできるはずがありません。予め先生から生徒たちの様子 ― 理系への進学はどのくらいか、生物はどのくらいの子が勉強しているかなどなどを伺いはしますが、さてどこに焦点を絞るか悩みます。ただ、幸いなことに、これまでのところ、話をしたあといつも感じるのは日本の未来は明るいぞということです。
 先日も、O市のA校に行き、とても気分が明るくなって帰ってきました。「環境問題、臓器移植、クローン、遺伝子組換えなどのことを考えると、これから出て行く社会に対して不安を持たざるを得ませんでした。けれども、今日の生命の歴史の話を聞いて、生命について理解をし、考えていけば、未来が拓けると思えるようになりました。」という感想を述べてくれた二年生の生徒会会長。次々と絶え間なく出てくる質問も、的を射たものでした。その後個人的に質問にやってきた十数人とは、「実験するとどうしても生きものを殺すことになるけれど、それについてはどう考えるか。」に始まって「何のために生きてるのかって考えることありませんか。」とか「死ぬのって恐くありませんか。」などという話にまでなって・・・とにかく考えている、とくに生きるということについてさまざまな面から真剣に考えている若者との数時間はとても心地よいものでした。女の子の気持は少しはわかるけれど男の子はつかみにくいなどと思っていたのですが、大勢の男子生徒がとても素直に話し合いに参加してくれました。生命誌研究館は、こういう話し合いの場でもありたいと思っています。このちょっと一言の欄にも気がついたこと、質問、意見などを聞かせていただけるとありがたいのですが。

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