館長中村桂子からのご挨拶:2013年
ごあいさつ:2013年
「ようこそBRHへ・・・20周年になりました。」
 いよいよ20周年です。生きものと向き合い、その物語を聞き、生命・人間・自然・科学・科学技術・・・広く言うなら現代文明について考え、納得のいく生き方を探す旅に終わりはありませんが、節目として意味のある年にしたいと思います。
 「生命誌研究館」という言葉を見つけ、とにかくそれの具体化に乗り出した時と今とでふしぎなほど気持は同じです。あまりにも同じで、物足りなくさえ思います。問い続け、考え続けてきたつもりですし、考える切り口として新しいものを求めてきました。ある時は真核生物の誕生こそエポックだと思ってのめりこんだり、上陸の魅力にとりつかれたりとあちこち歩きました。ラボでの研究もオサムシや藻類を用いての進化の物語の探求、チョウやニワトリを用いての発生の研究に始まり、現在のチョウ、クモ、イチジクコバチ、イモリ、カエルなどへと・・・どの研究も面白い展開になってきました。これまでの館のメンバー一人一人を思い、支えて下さる方を思う時、このような人と仕事に恵まれ、研究館は運がよいとつくづく思います。
 この20年、当初構想した「生命誌研究館」をはみ出ることはありませんでした。ここ数年、とくに東北大震災以後は、これでよいのかと考えましたが、何を考えても結局20年前と同じことが浮かんできます。基本は変わらず、しかしいつも新しいことに挑戦するこれからにしたいと思います。
 基本として、0年の「生命誌絵巻」、10年の「新生命誌絵巻」に続き、20年の「生命誌マンダラ」が生まれました。「生命誌マンダラ」で表現している基本は階層性です。真中にあるのは細胞、生命の基本であり、その中には必ずゲノムが入っています。具体的には受精卵を考えるとわかりやすくなります。それがさまざまに分化した細胞を生み、組織が生まれ、器官が生まれ、個体ができます。どの段階でも基本的には同じゲノムがはたらいています。そして、一つ一つの個体が独自のゲノムのはたらきで動いています。人間で考えるなら「私のゲノム」があり、それはヒトゲノムという種を表現するものでもあります。つまりゲノムは階層を貫いています。これは本当に面白いことです。階層性を考え、個体を考えるという大切な切り口を見せるのが「生命誌マンダラ」です。一つの個体ができ上がる発生の時間と、一つの個体の中でのさまざまな関係を示すものでもあります。
 「三枚の絵」を見ながら、生きものと向き合いその物語を聞き、生命・人間・自然・科学・科学技術・・・現代文明について考え、生き方を探す旅を続けます。メンバー一人一人が、自分の仕事をよりよいものにし、全体の活性化に努める組織として。
(2013年5月1日 JT生命誌研究館館長 中村桂子)
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