館長中村桂子からのご挨拶:2011年
ごあいさつ:2011年
「ようこそBRHへ」
 今年は準備室を開いてから20年、これまでを振り返りこれからを考えようと、これまでに書いた「ようこそ」を読み返してみました。生命誕生から38億年間連綿と続き多様化してきた生きものの歴史を読み解き、その中での人間の生き方を考えるという基本は変わっていませんが、具体的なテーマは少しづつ変化し、周囲との関わりも変わってきているのがわかります。そして昨年は、“自然の大きさを感じ謙虚にならなければならないというメッセージが外から送られてくるようになった感じがします”と書きました。
 そこへ3月11日の東日本での大きな地震と津波、それによる原子力発電所の事故です。まさに自然の大きさを実感すると共に、くり返し聞かされてきた「科学技術立国」とは何だったのだろうと考えこまざるを得ない実態を見せつけられました。
 報道される災害の凄惨さになんと理不尽なと思いながら、なす術はおろか語る言葉さえない無力さに打ちのめされました。その中での、被災された方たちの強さと柔らかさにはただただ頭が下がり、大地に根ざした人間の力を感じました。「何もかも失ないましたけれど人の絆があります、経験と技術があります」などと語る表情のなんと魅力的なことでしょう。ゴシャゴシャになった頭を整理すると、結局生命誌としては、自然・生命・人間・科学・科学技術という基本を地道に考え続けることが大事というあたりまえのところに落ち着きました。
 実は今年は、思い切って「人間」を考えてみようと思っていました。昨年まで、上陸に向けてきた眼を次はどこへ向けようかと考えた時、自ずと浮かんできたのが人間だったのです。難しいけれど、生命誌からの人間観を少しづつでも組み立てて行きたいと思っていたのです。そして3月11日です。
 それ以降、新しい日本を作っていく基本は生命誌ではありませんかというメールやお電話を何人もの方からいただきました。ありがたく思い、ほんの少しでも人間のことを考えてみようと改めて思った次第です。
 少々面倒なことを書きましたが、大声を出すのは苦手なので、日常は生きものの面白さを楽しむ活動をしながら、ゆっくり考えます。是非遊びにいらして下さい。きっと何かを感じていただけると思います。また今年はホームページを更に充実しますので、ここも訪問して下さい。そして書き込みをたくさんお願いします。訪れて下さること、さまざまな形で参加して下さることが何よりもありがたいのです。今年も何かを御一緒できたら嬉しく思います。

(2011年5月2日 JT生命誌研究館館長 中村桂子)
Greetings
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